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第008話 スキルの開花・D級の使い道

Auteur: 柳アトム
last update Date de publication: 2026-07-23 03:19:26

 僕は意気揚々としていた。

「まさかこんなにうまく黒鉄宝箱を獲得できるなんて」

 罠に掛かった時のゴブリンのあの驚いた顔。そして宝箱を奪われた事に怒り、僕を追いかけてくるあの必死の形相。

 僕はゴブリンの悔しがる様子を思い返し、「してやったり!」という勝利の喜びを噛みしめた。

「さあ、宝箱には何が入っているかな?」

 僕は落ち着いた場所まで移動すると、早速、宝箱の中身を確認する。

「お。飲料水のペットボトルが一本に、圧縮ビスケットが二個あるぞ。四人チームを組んだ他の「戦友」は食料と水不足に喘いでいたし、こうした物資が入っていることはありがたいな」

 僕は貴重な水と食料をカバンにしまう。

 そしてさらに宝箱に入っている物資を確認するが───。

「なんだこれ……。錆びたボトル? 摩耗したナット? ヨレヨレの金属板に汚れたゴムホース。それに割れた歯車に壊れているベアリング……。ガラクタばかりじゃないか……」

 僕はその場に膝をつき、ワナワナと震える。

 でもそれは宝箱の中身がガラクタばかりだったことにがっかりしたからじゃない。

 むしろその逆だった。

「す、凄いぞ! 魔力石こそ入っていなかったけど、宝箱の中身は僕にとって「使える物資」ばかりじゃないか!」

 僕は喜びに目を輝かせ、宝石でもすくい上げるかのようにガラクタを手にする。

 実際、今の僕にとって、これらの部品は宝石より価値のある貴重な品だった。

「他の人にとっては廃材だろうけど、修理や改造が得意な僕から見れば、これらは貴重な資源だよ」

 僕は早速、宝箱から獲得した「物資ガラクタ」を持って、トラックに向かう。

「これだけ材料があれば、トラックの修理がかなりできるぞ。まずはさっき開かなかったドアからだ」

 僕は壊れたドアのレバーを取り外し、不具合を補修する。

 この補修には壊れたベアリングから取り出した「転動体」と呼ばれる小さなボールが役に立った。

 そしてレバーを元通りドアに戻すと、スムーズに車のドアが開閉することを確認した。

「よし。次は開けっぱなしのリアウィンドウを塞いでおくか」

 さらに僕はヨレヨレの金属板を石で叩き、形を整えると、リアウィンドウを塞ぐ。

「むしろ劣化気味の金属板だったから簡単に整形できて良かったよ」

 僕はその事を「好都合だった」と前向きに捉える。

 他にも今回得られた宝箱の中身を利用して僕はトラックの修繕を行った。

「工具がないから応急的な処置しかできなかったけど、随分とマシになったぞ」

 特に、トラックを走らせると、荷台がガタガタと煩かったが、板鉄が外れている箇所をゴムホースで縛って、固定させることができた事は、かなりのストレス軽減となった。

 僕は修理を終えたトラックを見て、満足げに腰に手をあてた。

 すると僕のステータスウィンドウが飛び出すように開き、通知を表示する。

『おめでとうございます。あなたはスキルを獲得しました。

 スキル名:【改装】(D級スキル)

 低級の機械や車両、工具、部品に対して、基礎的な修理や改造を行うことができる。

 ただし不安定であり、改造中に物品を破損する可能性がある』

「やっぱりだね。異世界では行動するとスキルを獲得できるんだ。それにしても一回の改造や修理で「改装」のスキルを獲得するなんて、やっぱり僕は機械修理や整備に向いているんだね」

 僕は獲得した自分のスキルを懐かしむように眺める。

 実際、このスキルは僕にとって「長年」の相棒だった。

 別世界の僕はこのスキルを使って四人チームの「改装士」として後方支援を担当していた。

 異世界で「《天使セラフィム》」の「《審判ジャッジ》」に挑んだ当初、機械や車両を修理できる僕のスキルはとても役に立ったが、異世界での冒険が進み、装備や車両が充実してくると、皆は僕を必要としなくなった。

 そして僕はチームから追放されて……。

 別世界での嫌な記憶が僕の頭に流れ込み、僕の気持ちを消沈させる。

 僕は頭を振ってそれらを無理やり振り払うと、前を向いて決意を新たにする。

「あんな仕打ちはもう二度とごめんだ。今回、僕の「改装」のスキルは自分の為に使う。もう誰かに利用されたりするもんか」

 そう鼻息を荒くする僕は、トラックの運転席に座る。

 そしてエンジンをかけて目的地に向かってトラックを走らせた。

 快調に流れゆく異世界の景色を眺めつつ、僕は引き続き「MCCマップチャンネルチャット」を眺める。

 するとそこには水と食料不足に喘ぐ戦友の嘆きが多数、投稿されていた。

「宝箱の中身はわずかな水と食料とガラクタばかりだ!」

「こんなガラクタ、いらないよ! 水と食料をくれ!」

 僕はフッと鼻を鳴らず。

「貴重な「資源」をガラクタと言うなんて。その「ガラクタ」の価値に気づいているのは、どうやら僕だけのようだね」

 そこで僕はふと、先ほどの黒鉄宝箱から入手した飲料水のペットボトルと圧縮ビスケットに視線を落とす。

「皆がまだ「貴重な資源」を「ガラクタ」だと思っているなら、少しの水や食料で交換することができるかもしれないな……」

 僕は自分のアイディアにニヤリと口元を歪める。

「よし、今のうちにこの僕が、皆が「ガラクタ」と蔑む「貴重な資源」を全て買い集めてやる……!」

 その思いには、前世───そして別次元の僕が「役立たず」「用無し」などガラクタのように扱われた悔しさも滲んでいた。

「ガラクタを舐めるなよ。ガラクタの価値、そして恐ろしさを知らしめてやる……!」

 僕はギュッとトラックのハンドルを握り締めると、さらに強くアクセルペダルを踏み込み、先を行く戦友たちを追いかけた。

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